長野日報 21世紀へ さらば会社人間シリーズ18 最終回

安藤実さん(富士見町境広原)ペンション ジョナサン経営

「子供のころから、山で仕事をしたいと思っていた」という安藤実さん(50)が、富士見町境広原の富士見高原ペンションビレッジ内に「ジョナサン」を建てたのは1983年(昭和五十八)年7月。20年前のこと。東京の武蔵境駅前のイトーヨーカ堂で衣料品売り場に勤務していたが、職場結婚の妻直子さん(46)と一緒に会社を辞め、同町で第二の人生をスタートさせた。

 東京日野市出身の安藤さんは、中学高校時代からSL撮影が趣味で、真冬の北海道など全国に撮影に出掛けていた。東京農大農学部卒業後は、大手新聞社関連会社でPR関係の仕事に従事したが退職。上高地帝国ホテルでのアルバイトを経験するなどしてイトーヨーカ堂に就職した。
 しかし、山への思いは捨て切れず、休日を利用して、直子さんと山梨、長野方面にドライブに出掛けながら次のステップを模索していた。そんな折り、同町の鉢巻道路を通りがかった際に偶然、「ペンション販売中」の看板を見つけ、その足で町役場を訪れた。

 安藤さんは当時、自己資金が三百万円しかなく、「全額借り入れは無理だろう」と半ば諦めていたが、役場の土地開発公社担当者は、そのまま農協融資係に安藤さんを連れて行き、数千万円の借り入れを即座に決定するという素早さで、「ペンション経営」が決まった。
 「当時、県企業局が開発し、公社が分譲していたペンション用地に買い手がつかず、町議会でも問題になっていたそうですが、そのためでしょう」と安藤さん。

 大きなリスクを抱えての出発だったが、安藤さんの人柄や、バブル期のペンションブームも追い風となり、客足は順調、収益は右肩上がりで伸び、当初の借り入れは昨年すべて返済した。
 今後は「自分の時間を大切にしたい」と、冬場平日の”オフ”を利用して全国の常連客宅を2人で回り、営業活動を兼ねた旅を楽しんでいる。北海道、九州にも出掛けるという。

 現在、インターネット上にホームページを開設しているが、ネット上の宣伝効果を実感。今後は「雑誌広告を縮小し、趣味にもっと重点を置きながら、富士見高原の自然を守る手助けもしていきたい」と話している。長野日報第32044号のトップページに掲載されました。

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